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Daily life of mother of autistic child

- Daily life of mother of autistic child -

4年前、幼稚園の中に入れなかった日のことを思い出して

10月の第一月曜日は幼稚園の新入園児の面接日だ。

 

この日が特別な日になってから、今年で4度目を迎える。

手探りで駆け抜けてきた日々が懐かしく感じられるようになったのは、幼稚園で過ごす時間の終わりが見えてきたからだろうか。

 

4年前の夏のある日。

幼稚園の園庭開放に参加した。

初めての場所を嫌がることがよくあったが、すでに始まっていた水遊びに興味を惹かれたのか、少し重めの足取りで中に入った。

 

しかし、表情が冴えない。

ずっと俯いたまま、前髪の隙間から覗くように周囲を観察している。

体は強張り、私の声が聞こえているのかわからない。

とても長い時間そうしていたように感じたが、実際には10分も経っていなかっただろう。

 

「かえる」

少しずつ気持ちを言葉にできるようになっていた長男が絞り出した言葉は、私の心を締め付けた。

久しぶりに二人で過ごす時間でもあったから楽しく過ごしたかったけど、ただのエゴの押し付けになってしまった。

 

そのまま、門に一直線。

その足取りは来た時よりも早く、この場から1秒でも早く立ち去りたいという気持ちが伝わってくる。

 

 

自転車に乗るなり、泣き出した。

不安でいっぱいだった気持ちが溢れ出てきたのだろう。

「お土産持って帰って」と追いかけてきた先生がお菓子を渡してくれたけれど、長男は受け取らない。

早く帰りたいと泣き続けている。

長男には申し訳ないが、先生と直接話したいという目的もあったので、少しだけ時間をもらった。

 

「長男は自閉と診断されているのですが、受け入れてもらえますか」

 

この日までに、何度この言葉を人に伝えたか。

そのたびに「なぜ3歳でこんなにも選択肢を奪われるのか」と、悔しさを噛み締めた。

 

やっと言葉が出てきたところで、自分の気持ちを言葉で伝えることができない。

排泄、着替え、食事も自立していない。

それでも、受け入れてもらえるか。

 

「どんなお子さんも、ちゃんと成長します。

もしお母さんがうちの園をいいなと思ってくれるなら、ぜひ来てください。待ってます」

 

どの園からも「障害の程度による」「公立なんで断ることはしません」といった反応ばかりだったが、やっと私たちを受け入れてくれるところが見つかった。

 

この日、長男が自閉症と診断されてから初めて喜びの涙を流した。

 

しかし、その後が大変だった。

幼稚園の中に入れず、入園面接を受けられなかった。

制服採寸の日も、ずっと泣き叫んでいた。

少しでも慣れさせようと時間を見つけて幼稚園に通ったが、道途中で気づき自転車から落ちる勢いで暴れて抵抗した。

 

受け入れてもらえたが、このまま通えないかもしれない……。

 

覚悟をしながら迎えた4月。

幼稚園の動画を見せたり、パンフレットを見せたり、制服を見せたり、ときには小虎に頼った。

幼稚園って楽しいところなんだと、耳を塞がれるほど何度も伝えた。

 

それらの効果があったのかは分からないが、入園式の日、初めて自らの足で門をくぐった。

たったそれだけのことかもしれない。

でも、私たちにとっては険しい道のりだった。

 

幼稚園に笑顔で行く日もあれば、行きたくないと朝から泣く日もあり。

制服を着てくれる日もあれば、靴を履いてくれない日もあり。

次第に、「幼稚園おやすみ」と言わないと、食事も着替えも全てを拒否するようになった。

言葉で伝えられない分、身体で目いっぱい表現しているのだ。

でもその気持ちを受け止め続けるには、葛藤と不安と戦い続けなければならなかった。

 

不登園を乗り越え、あの日から4年。

やっと、毎日幼稚園に通えるようになった。

 

 

 

朝起きて、朝ごはんを食べ、着替えをし、支度をする。

「行くよー」と声をかければ、自らリュックを背負い、玄関に行き、靴を履く。

 

そんな当たり前のことが、当たり前じゃない日々を過ごしてきたから、今ある”当たり前の日々”を噛み締める。

 

「お友達がまってるよ」と言うと「おともだち、いない!!」と怒っていた長男が、今ではお友達と遊ぶことを楽しみにしている。

 

後ろから長男を抱えて追いかけてばかりだった日々は、いつのまにか私の手を離れてみんなと歩幅を合わせられるようになった。

 

何気ない日常にこそ、たくさんの成長が溢れている。

これからも変わらずに、ひとつひとつ成長を丁寧に摘み取り、大切に積み上げていこう。

 

4年前、幼稚園の中に入れなかったこと日のことを思い出しながら、当たり前の日常に喜びの涙を流す。

 

 

おまめ